ルパン三世PARTlll
メインキャラクターの変遷

イラスト/池本剛
解説/Typer

ルパン三世PARTlllほど、シリーズ中にメインキャラクターのデザインが何度も変更になったシリーズはない。
もともとPARTlllは、各話の作画をエピソードごとの作画監督に任せ、クリエイターごとの個性を出すシステムである故に
毎回顔が変わるシリーズとしても有名だが、
基となる、青木悠三氏によるキャラデザイン画も大幅な変更が何回か行われた。
このコーナーでは、そのPARTlllのメインキャラクターの特徴を、時期毎に解説していくものである。

ルパン三世

「ルパン三世PARTlll」の初期におけるコンセプトは、原作への回帰。
しかし、20年近く前のモンキー氏の絵ではなく、
今現在(キャラデザ当時は1983年)のモンキー氏の絵を意識してこそ意味があると考えた青木悠三氏は、初期デザインを作り上げた。
この初期デザインはPARTlll製作決定前に製作が進行していた、
「ルパン8世」(キャラデザイン・荒木伸吾氏)の影響も、各キャラクターが強く受けている。
(余談だが、8世は製作中断になってしまったがPARTlll第1話の作画は荒木プロ。荒木氏曰く、”ルパン8世の時の復讐”だそうだ。)

旧ル、新ルに続く第三のアニメルパンを作りあげようとした、最初の結果である。
池本氏のイラストを見てわかる通り、輪郭や目などは当時の原作にとても近い。
原作の絵をアニメ向きに絵を丸くして、スタッフが描きやすく…というのを念頭におかれたのが、初期のデザインだ。

1クールも過ぎない頃から、青木氏による大幅なキャラ設定の変更が行われる。イラストにある”前期”がそれだ。
現在の原作の絵を…という初期とは正反対に、原作の初期をイメージしたものになっており、
アゴの割れ具合や、影のつけ方、顔の長さなどが原作初期の雰囲気と、青木氏の独自性がよく表れている。
何故このような大幅な変更が行われたのかはわからないが、
以降の青木氏によるキャラ設定画は線が多く、シャープな描き方になっており、
とても”青木氏らしい”ものになっていることから、
初期で自分らしさが思いきって出せずにいたものを爆発させたのが前期なのであろう。
今までのアニメルパンには無かった、別の”カッコ良さ”がよく出ているデザインだ。
ちなみに私、Typerが一番好きなデザインが、この前期でもある。

しかし、初期にあった”描きやすさ”という点で考えるところがあったのか、次第にキャラクターは単純化されていき、
原作への意識が薄まった、PARTlll独自のものへとキャラクターは変化してゆく。

中期〜後期にかけて、
だんだんとアゴの割れが鋭いものからなめらかになってゆき、各所に描かれていたリアルな線が無くなった。
やがてアゴの割れが無くなりイラストにある後期のように変化してゆく。
青木氏が試行錯誤していった結果、
「こんなところでいのかな?」と落ち着いてきたのが、この後期ルパン。
初期や前期と比べて、単純で可愛らしい、デフォルメされたキャラクターになっている。
これが、青木流PARTlllルパンの完成形だ。

とは言っても、後期は各回で作画のバラつきが大きく
各回の作監のカラーが(悪い意味でも)出ている為、
”これぞ後期”というものは現実的に存在はしていない。
が、池本氏によるイラストで再現されたものが後期というような考えで話を進めてしまっても問題は無いであろうと思われる。

前期〜後期は

PARTlllファンにはお馴染みの顔で、これぞPARTlll!というものだが、
現在発売されている商品や書籍のPARTlll紹介などでは
専ら初期のデザインを使用されている事が多い為、
PARTlllを見た事の無いルパンファンは
初期デザインがPARTlllの全てと思ってしまっている方が多いのが現実だ。

もしPARTlllを未見の方がこのページを見ていたなら、
ここで認識を改めて頂ければ幸いだ。


さて、最後にバビロンの黄金伝説。
バビロンはPARTlll製作中にPARTlllスタッフらによって作画がなされた劇場版であり、
その影響はPARTlllTVシリーズ終盤にも多大に及んでいる為、
このコーナーで取り上げることにした。
バビロンはPARTlllのキャラをベースに、若干体格をガッチリさせ、
顔つきも万人受けしそうなものになっている。
このバビロンのキャラこそが、
”青木ルパン”の集大成と言ってもいいだろう。

(ルパンのみ、表情豊かなキャラが伝わるよう、
不敵顔と笑顔の2パターン池本氏にイラストをお願いしました。)















銭形警部

過去のデザインとの差別化を図る為か、
アゴの表現が控えめな、初期。
初期デザインのレギュラー5人の中で、一番原作色が薄いのが特徴か!?
帽子を脱いだ状態だと、下マツゲが無ければルパンと似てしまっているのが難点?

それに次ぐ前期は、アゴが広がり目の下の線が入った。
リアル化に伴い、”鬼警部”なイメージが強まったのが判るだろう。

中期ではアゴの割れが真っ二つになり、リアルさも薄まってゆく。

そして!注目すべきは後期である。
池本氏のイラストを見て頂ければ一目瞭然。
他のレギュラー四人と比べて輪郭の変化が凄まじい。
そう。まさに台形である。
キリっとした(初期)〜スゴみをきかせた(前期〜中期)から、
コミカルさが押し出されたデザインに変化した。

そして、バビロン。
イメージでいうと、PARTlll中期と後期の中間のようなデザインに仕上がっている。

PARTlll→バビロンの際、
ルパン・次元はワイシャツの色が落ち着いたものに変更されているのは見ての通り。
銭形はそれに加え、コートの色も黄色になったのがポイント。
全体的にライトで”今風”を表現しようとしたPARTlllと、
劇場版という事で変更されたバビロン。
色使いという点でも、青木氏がよく考えられた上でデザインされているのが良くわかる。












次元 大介

原作(新ルパン)を強く意識し、
これまでのアニメ次元で隠していた目を普段も出すようにしたのが、初期の大きな特徴である。
髪型や目の露出具合など、原作(新)ファンなら納得のデザインであろう。

そして、青木氏のセンスが爆発の前期では、
頬がこけ、鼻が尖り、目の露出が少し控えめになった。
輪郭や鼻などは、より原作に近くなったようだ。
髪型もボサボサ度が増し、
帽子の下に隠された目は、タレ目になった。
ワイルドな雰囲気がプンプンな前期である。

中期〜後期では、
鼻の尖りがなくなり、髪形も若干変化…いやいや。
実は髪型は大幅な変更がなされている。
イラストではわからないが、帽子の下の隠された前髪は
新ルパン・テレコム作品と似た髪形になっているのである。
よって、
初期〜前期では原作(新)同様に目を見せていた次元も、
中期以降では従来のTVシリーズと同様に、目をあまり見せなくなったのが特徴だ。

バビロンの黄金伝説では、
若干、顔の長さが縮まり、頬のこけも無くなった。
バビロンのレギュラー5人の中で、
一番”普通”なおとなしめなキャラに仕上がったのが、次元かもしれない。















石川 五右ェ門

これまでのアニメルパンの中で、一番原作とかけ離れているのが五ェ門なのである。
PARTlllでは、
いかに原作の雰囲気を出したキャラクターを作るかで大変だったようだ。

初期では原作のキャラをりりしく(ゴツく!?)アレンジした感じで、
今までの五ェ門とは全く違ったキャラクターに仕上がった。
ルパンと同じようなモミアゲも特徴の一つ。

前期では輪郭が変化し、他のキャラ同様にリアル路線に。
凛々しさが増し、年齢も若返った感が伝わってくる。
デザインは違えど、
従来のアニメルパンの五ェ門の中で一番原作に年齢が近い雰囲気を出しているのがPARTlllかもしれない。

中期〜後期では、
他のキャラ同様にリアルな線が減ってゆき、顔が長くなってきた。
初期〜前期で作り上げたものを、従来のアニメ五ェ門と融合させていった感じだ。
輪郭等で、うまくPARTlllの独自性を保っている。

バビロンの黄金伝説では、
他の男性キャラ以上にガッチリとした体格になり、
目つきも若干鋭くなった。
が、本編ではPARTlll後期とあまり変わらない印象を受けてしまうのは残念なところか。

ちなみにPARTlll→バビロンにおいて
ハカマの色が紺から茶色に、上着も黒のラインが入り、
「VS複製人間」に近いデザインになっている。











峰 不二子

初期不二子は、
輪郭や髪型などは、原作をとても意識したものになっている。
全体的に丸っこい、幼い感じに仕上がっているのが特徴。

前期は、他のレギュラー四人と同様に、リアル度が強調されている。
初期にあった丸さが無くなり、シャープな感じだ。
かわいい感じの初期とは全く異なり、
カッコ良さが重視されているのが良くわかる。
キャラクターのポイントとなる”目”は、とても原作に近くなっている。

そして、中期。数あるルパン作品における不二子の中で、
最も好みが分かれるデザインで有名である。
やはり後半のオープニングでのリンゴ爆弾を持つカットが強烈だったためであろう。
強調されたまつげと口紅は、ものすごい印象であった。

ちなみにPARTlll本編では、不二子は口紅を滅多につけていない。
そこから、色気よりもカッコ良さや活発さを重視しているのが伝わってくる。

中期〜後期では他のキャラ同様デフォルメが行われており、
不二子は前期で作り上げた原作チックな目を強調しつつ、それを残して、
他のレギュラーに合わせて顔が長くなっていった。
後期になるにつれ、全体的にアッサリしたキャラクターになってゆく。

バビロンの黄金伝説。
設定画では、「VS複製人間」の目をさらに原作に近づけ、
口もとは原作を基にしたPARTlllらしいものになっている。
そう。口紅をしているのが大きなポイントだ。
本編においては口紅をつけたPARTlll不二子という印象が無くはない。
が、可愛さと色っぽさという点では、青木不二子の完成形であると言っても過言では無いだろう。












「ルパン三世PARTlll メインキャラクターの変遷」いかがだったでしょうか?
稚拙な文章で恐縮ですが、PARTlllにおける様々なメインキャラデザインの違いを紹介した、
今までありそうでなかった面白い企画になったと思います。
実際の本編の画像を使用せず、すべてのイラストを池本氏にお願いしたトコロが、このコーナーの意図するところでもあります。
本来、私はイラストをお願いする際にダメ出しはしないのですが、
今回は特別、池本氏にもご理解頂いた上で何度も描き直して頂きました。
結果、私も池本氏も、PARTlllファンとして納得いくものになったと思っております。

このページによって、食わず嫌いによるPARTlllを未見のルパンファンが減っていく事を心から願っております。

注意:”最も原作に近い”というような表現を多用しておりますが、あくまで1984、1985年当時の事で、です。
ですので、「ルパン三世 DEAD OR ALIVE」が一番近いぞ!ってのはナシという事で(^^;

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