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イラスト&エッセイ

「裏通り高速道路」
モンキー・パンチ

「どちらまで?…」
「大泉学園……」
「どっちの道…通ります?」
「まかせるヨ……」
千駄ヶ谷小学校前から、大泉学園までだ。
明治通りを走って、十三間道路を谷原交差点までと、甲州街道から山手通りに入って、十三間通に出るのと、この二つしかない。深夜料金を加算されたとしても、料金には大差ないはずだ。残業でくたびれた体には、道順をくどくど指図する気もおきない。
それにしても、乗心地のいい車だ。エアコンも疲れた体をいたわるように効いている。
「今日、おろしたばかりの車です。」
「ヘエ…新車か…。」
「お客さんが、はじめての乗客ですヨ。」
「なにか記念品でもくれるっ…てのはどうォ…。ははは…。」
「もちろん。サービスをちゃ〜んと用意してあります。ははは…。」
「ヨイおんなでも、用意してくれてんのかい…?」
この冗談は、運転手には受けなかったようだ。無言でアクセルをふかしている。
それにしても、このタクシーはどこを走っているんだ。つい、気が付かなかったが、明治通りでもない…。甲州街道でもない…。山手通りでもない…。いままで通った道とはまるで違っている。居るんだよ!!こう云う、タチの悪い運転手が…。わざと遠回りして走行距離をのばそうって奴だ。
「ねェ…。いまどこ走ってんの?」
「明治通りも、いまの時間はこんでるんでね。抜け道を走ってるんだ。」
ウソだ!!
「つい最近みつけた裏通りでね。東京のド真中にあるってのに、たまぁ〜にしか、車が通らねェ…。信じられねェよ。」
ウソだ!! ウソだ!!
「この裏通りを抜けると、大泉学園までなら十五分たらずで着いちゃうんだから…」
ウソだ!! ウソだ!! ウソだ!!
千駄ヶ谷小学校前から大泉学園まで、どんなに車のすいている時だって四十五分はかかる。
「大泉学園ですヨ。つきあたりを右ですか?左ですか?」
!!…!! たしかに大泉学園だ。十五分しかたっていない
「あっ!!…そこを右に曲がって……五十米位先でおろして…!!」
料金表示機を見た。千三百円だ!! いつもなら四千八百円位なのに…。 二千円出した。
「ツリはいいよ。」
「どうも…。あっお客さん。高速道路料金もかかるんです。」
「エッ!!高速道路を通ったっけ!?」
「通りましたヨ。裏通り高速道路を…。」
「ははは…。たしかにはやかったもんね……。いくら!?」
「五百万円です。」
「冗談はよそうよ…」
「いいえ。お客さんが、道順をオレにまかせてくれから、裏通り高速を通って来たんですから…。五百万円はその料金ですヨ。」
「そんな…ケイサツに行こう!!ケイサツに!!」
頭に来たとはこの事だ。完全に取りみだしている。
「…ですが、この車の最初の乗客ですから、その高速料五百万円をサービスすることになってるんです。」
そう云い残すと、その新車タクシーは深夜に消えて行った。

解説/TYPER
「裏通り高速道路」
この作品も「酔どれ雷」と同様に正確な初出年月日や掲載雑誌は不明です。
が、モンキー先生が大泉学園に住まわれていた頃の作品である事とイラストの雰囲気から判断して、
原作「新・ルパン三世」を執筆されておられた頃の前後に執筆されたものと思われる。
そして、この作品の原稿用紙は双葉社オリジナルのものなので、
恐らく漫画アクション本誌か増刊号に掲載されていたものだと思われます。

これが、「裏通り高速道路」の生原稿の一部!

ご注意
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